秒速5センチメートル

今日は新海誠さん作の小説「秒速5センチメートル」を解説します。

 

こういう人におすすめ!

秒速5センチメートルをアニメで見たことがあり、より深く物語を理解したい

・切ない気持ちになりたい

・小さかったころの自分を思い出したい

 

あらすじ

小学生の遠野貴樹は東京に転校してきた明里と出会う。貴樹は彼女と仲良くなり、この先も一緒に過ごすことができると疑わなかった。しかし中学入学直前に明里は再び転校してしまう。その後、今度は貴樹が鹿児島に転校することになるが、その前に二人で会う約束をする。そこでの出来事が彼の人生に強い影響を残すことになる。

 

ピンポイント考察

「明里が手紙を渡せなかった理由」(ネタバレ注意)

 

第一章で二人が再会した時、お互いに手紙を準備しており、それぞれ相手に渡すつもりでいました。しかし、貴樹が準備した手紙は会う前に風で飛ばされてしまい、一方の明里の手紙は結局渡さずに終わってしまいます。この手紙の交換がなされなかったことがこの物語の大きな転換点だと私は思っています。なぜ、明里は手紙を渡せなかったのでしょうか。

 

それは再会時のキスにあります。キスをした際、「その前と後では世界が変わってしまったみたいに私は感じた」と明里は述べています。どのように変わってしまったのか、これは小説中で語られておりませんが、状況から推測するに、ずっと貴樹を好きでいるのは難しいのだと悟ってしまったのではないでしょうか。だから「ずっと好きでいる」と書いた手紙を渡せなかったのでしょう。その代わり、二人が別れる前に「貴樹君はきっと大丈夫だよ」というメッセージを送ったんだろうと思います。

そのキスを境に明里は貴樹との出会いを思い出として心にしまい込もうと決断したと思います。

 

一方の貴樹はどうだったのでしょう。彼もキスをした瞬間、様々な思いがこみ上げ、替えのきかない経験をします。同時に明里とずっと一緒にいることはできないと認識します。でも、いつか会えると信じ、その後の人生を歩んでいきます。その後の彼の様子は物語で語られていきます…。

 

キスをして気づいた二人の現状と未来。その捉え方はお互いで異なってしまった。此の点において「秒速5センチメートル」がつらく悲しい物語であると感じてしまう理由なのでしょう。

 

興味がありましたら、「秒速5センチメートル」を読んでみてください!

 

 

 

 

 

解説

この小説は、元々アニメとして作成した物語を小説に書き直したものです。そのため、アニメと補完しあっている所があり、アニメと小説を両方鑑賞することでより物語を楽しめると思います。

 

この話はざっくりいってしまうと、主人公の遠野貴樹が明里の存在を忘れられず、社会人になっても引きずる様子を描いた物語です。一方で明里は別の人と婚約するシーンが描かれており、両者の対比から鬱アニメと呼ばれることがあります。

貴樹と明里、二人はお互いのことを大切に思っておりそれがずっと続くと信じていました。しかし貴樹が転校する前、二人が再会した際に二人の考えは変わってしまったのだろうと小説を読んで思いました。それを読み解くカギは「手紙」にあります。

 

再会する前、二人はそれぞれ手紙を準備していました。物語の最後に、貴樹宛てに明里が書いた手紙の内容が明らかになるのですが、「明里は貴樹のことをずっと好きでいる」と書いてありました。結局この手紙が貴樹の手に渡ることはありませんでした。再開し、明里と貴樹がキスをした時、明里の中で世界が変わってしまったからです。